第四話 Death,Agony and Screams 其の6

2017年11月8日カツラ大戦争

 廊下は静まり返り、まったく人気が無い。最上階のスイートルームは、階段前のベラマッチャたちの部屋をはじめ、真ん中の部屋、奥の部屋と廊下沿いに三部屋並んでいる。

「階段の所に隠れておれ」

 姿が見えないシャザーン卿の声にベラマッチャたちは無言で頷き、息を殺して階段の壁際に潜んだ。

 壁の角から顔を出して覗くと、スッペクタ一人が奥の部屋に向かって歩いて行く。緊張のためか、スッペクタの動きはぎこちない。

 スッペクタは奥の部屋の前に立つと、緊張の面持ちで深呼吸し無表情になった。おそらく、魔ヅラを被っている演技だろう。

 スッペクタが扉をノックすると女が出て来た!

「暴行族……。不審な連中と乱闘して解散した筈……。まあよい、連中について聞きたい事がある」

 女はスッペクタを疑惑の篭った目でジロリと見ると、廊下を窺ってから中へ招き入れた。

 扉が閉まると、ベラマッチャは大きく息をついた。

「フゥ、緊張したな、諸君」

「シャザーン卿は部屋に入れたのかしらん?」

 緊張のため、皆が一息ついていると、目の前からシャザーン卿の声が聞こえて来た。

「股ドールだけじゃ! 扉の鍵は開けてある。貴様等、すぐに来るんじゃ!」

 声を潜ませて喋る、姿の見えないシャザーン卿にドキリとしながらも、ベラマッチャたちはすぐ行動に移した。足音を忍ばせて奥の部屋へ向かい、扉の前に立つと、ベラマッチャは音を立てない様ゆっくりと扉を開け始めた。

「諸君、行くぞ!」

 ベラマッチャの合図と共に、全員が一斉に部屋へ雪崩れ込んだ!

「ヅラスカヤという、けしからんレディは君かねッ!」

 ベラマッチャは扉を閉め、大声で叫びながら部屋へ入ると、信じられない光景が目に飛び込んで来た!

「あぁッ!」

 部屋の中央で、スッペクタが血の海に横たわっているのである!

 ヘンタイロスもポコリーノも、そしてパンチョスまでもが、凄惨な光景に絶句し立ち尽くしていた。

 スッペクタの遺体の横では、身体が透けて見えそうなくらいに薄い、赤いドレスを身に纏う美しいフェロモン熟女が、

妖艶な笑みを湛えながらソファーに座っている。

「フフッ……。驚いたかしら? でも、貴方達もこうなるのよ」

 熟女はテーブルの上のグラスを取り、葡萄酒を一気に飲み干すと、唇から零れ落ちる雫をゆっくりと舌で舐め取り、グラスをテーブルに置き喋り始めた。

「私の事はご存知のようね……。この『マダム・ヅラスカヤ』と戦おうなんてお馬鹿さんたち、初めて見たわ。ウフフッ……」

 そう言うとヅラスカヤは、空になったグラスに葡萄酒を注ぎ、ウインクしながらベラマッチャたちに向かって乾杯した。


2017年11月8日カツラ大戦争