第四話 Death,Agony and Screams 其の3

2017年11月8日カツラ大戦争

 ――どれくらいの時間、眠っていたのだろう。ギターの弦を弾く音で目覚めたベラマッチャは、両手を伸ばして欠伸し、固まった身体を解した。

 身体を起こすと、パンチョスがギターの弦をチューニングしている姿が目に入る。周りを見ると、みな既に起きている。

「ベラマッチャったら、お寝坊さんだわん。ウフフ……」

 ランプの炎が揺れる薄明かりの中、ヘンタイロスが紅茶を淹れて手渡してくれた。

 湯気の立つ紅茶を啜りながら、ベラマッチャは誰に話し掛けるともなく口を開いた。

「もう日が落ちるな」

 ベラマッチャの言葉に、シャザーン卿が頷いた。

「日が落ちたら、すぐホテルへ向かうんじゃ。全員、ポロスで買った被り物を忘れるでないぞ」

 言い終わるとシャザーン卿は、ヘンタイロスの背中に括り付けてあるバックパックに面を入れ、テーブルの上のカップを掴んで一口啜り、パンチョスもギターを置いて不敵な笑みを浮かべる面にキスすると、バックパックに仕舞い込んだ。

 ベラマッチャもポコリーノと一緒にバックパックに面を入れたが、ポコリーノの学帽が目に入り、ふと素朴な疑問が浮かび上がった。

「ポコリーノ君、失礼だが、サンドガサ・ハットの様に、面も学帽の上から被るのかね?」

「ああ、学帽とガクランは俺のトレードマークだからな。学帽を脱ぐ気にはならねえのさ」

「流石はポロスの『小学十年生』ねん」

 ポコリーノはヘンタイロスを見ると、ニヤリと笑った。

「フッ……、正確には『小学十五年生』だ。もっとも、まだ除籍されてなければ、だがな」

 そう言うと、ポコリーノはカッパ・マントとサンドガサ・ハットを身に付けた。

 それを見たベラマッチャたちも、カッパ・マントとサンドガサ・ハットを身に付け、準備を整える。

 ベラマッチャは、近くにいたスッペクタにカツラを被るように言い、窓から表を見た。

「日が落ちたな」

 ベラマッチャは全員の支度が整ったのを見ると、部屋の扉を開けて階段を降りた。

 夜の闇の中、マラッコの屋敷の庭に出て門へ向かうと、門番の若い者が行き先を尋ねてくる。

「お客人、どちらへ?」

「むぅ、賭場で少々遊んでくるよ」

 ベラマッチャが答えると、門番の若い者は人数が増えているのに気付かないのか、そのまま外へ出してくれた。

 門の外でシャザーン卿がヘンタイロスに騎乗すると、一行はホテルへ向かった。

 宵闇のワグカッチは人出が多く、雑踏の中を縫うようにして進まなければならない。喧騒の中、街の中心部に出た一行は、夜の街の誘惑にも惑わされずに目的のホテルへと辿り着いた。


2017年11月8日カツラ大戦争