第四話 Death,Agony and Screams 其の2

2017年11月8日カツラ大戦争

 シャザーン卿とヘンタイロスはベッドに寝転ぶと、あっという間に大鼾を掻いて寝てしまい、ポコリーノとパンチョスはゴロリと床に寝転び、お喋りを始めた。二人は馬が合うのか、一緒に居る時が多い。

「おいパンチョス、フライパンに捻り出した糞は始末したのか?」

「フッフッフ……。このカルロス・パンチョス、やられっぱなしで終る男じゃねえ。あの後ザーメインが脂汗を滲ませた筈だ。山盛りになった俺の糞の上に座ってよぅ」

 どうやらパンチョスは、ザーメインの椅子の上にフライパンを置いてきたようだ。二人の会話を聞きながら、一人残されたベラマッチャは、テーブルの上のカップを両手で握り、俯いたまま座っているスッペクタに話しかけた。

「スッペクタ君、眠れそうかね?」

「ヘヘヘ……、眠れる訳がねえ。俺たちは王宮の偉い人たちに命を狙われてるんだろ? それも腕利きの連中に。王国の公務員が国民を殺していいのかよ?」

 スッペクタは泣きそうな顔でベラマッチャを見つめ、震える声でぼやき始めた。

 ベラマッチャはエージェントに利用され、訳の分からぬままこの場にいるスッペクタが気の毒になり、棚から酒を持ってくるとスッペクタが持っているカップに注いだ。

 スッペクタは震える両手でカップを握り、一気に酒を飲み干して大きく息をついた。

「フゥーッ! 美味いぜ、この酒は。なんて酒だい?」

「ラベルには『大吟醸 破壊』と書いてある」

 ベラマッチャがそう告げると、スッペクタは何度も頷き、美味いのは当然とばかりに酒を褒めちぎった。

「ダウーギョの有名な酒だぜ、俺が捨てられていた街の。美味いのも当然か」

「スッペクタ君、ご両親が生きていれば、きっと逢える日が来るだろう。職人三十六房のエージェント相手では、疲れは死に直結する。酒を呑んで早く休息を取りたまえ」

 スッペクタはベラマッチャから酒瓶を受け取ると続けて三杯を飲み干し、ゴロリと床に寝そべった。

 ベラマッチャも仮眠を取るためにスッペクタの横に寝転び、物思いに耽りながら天井を見つめていると、スッペクタが話しかけてきた。

「なあ、ベラマッチャさん……」

「どうしたのかね?」

「――俺の親は、俺が邪魔だったから捨てたのかな?」

 スッペクタの問いかけに、ベラマッチャは目の前でカダリカに犯され、自分の槍で刺し殺してしまった母を思い返し、少しの間沈黙した後、頭を振って答えた。

「スッペクタ君、子供が邪魔な親など居らんだろう。きっと理由があっての事だ」

「――そうだよな。きっと訳があったんだ」

 そう言うとスッペクタは身体を横に向け、やがて寝息を立て始めた。

 ポコリーノとパンチョスのお喋りも聞こえなくなっており、見れば二人とも鼾を掻き始めている。

 ベラマッチャは両親に捨てられ、心に深い傷を負っているであろうスッペクタに同情し、心の中で己の家族の冥福を祈りながら目を閉じた。


2017年11月8日カツラ大戦争