第三話 Substitute 其の6

2017年11月8日カツラ大戦争

 扉を開けて外に出ると、ポロスの街の喧騒に包まれた。カダリカ一味に襲撃されたこの街も、だいぶ賑わいを取り戻している。大陸との戦争で税金が上がっていると聞くが、街の人々は知恵を絞って遣り繰りしているようだった。

 ベラマッチャが大きく息を吸い、身体を解していると、ヘンタイロスが不安げな顔で近づいて来た。

「ねえんベラマッチャ、エージェントと戦うって言っても、どんな相手か分からないんじゃ戦えないわよん?」

「むぅ、確かにその通りだ。魔ヅラを防げば勝機も見い出せそうだが……」

「ヘヘヘ、閃いたぜ! 先に何か被ってりゃいいのよ! 俺の学帽みたいにな」

 ポコリーノが手を叩いて自分の閃きを口にすると、ヘンタイロスの顔がパッと明るくなった。

「それだわん!」

「確かに被らなければ、魔ヅラとて効かなかろう」

 傍らにいたシャザーン卿も頷いている。ベラマッチャはポコリーノのアイデアに感心し、このアイデアについてどう思うかザーメインに聞いてみる事にした。

「ザーメイン、直接頭に被らなければ魔ヅラは効かんと思うが、君はどう考えるかね?」

 ザーメインは白髪頭を撫でながら、下を向いて考え込んでいたが、やがてベラマッチャに顔を向けた。

「それは素人考えじゃろう。職人の技は門外不出、被り物で防げるかはワシにも分からん。じゃが、二重、三重の防御はしておいたほうがいいじゃろう」

 ザーメインが話をしていると家の扉が開き、パンチョスが苦笑いを浮かべながら外へ出て来た。

「ふぅ、まいったぜ」

「貴公、後始末はしたんじゃろうな?」

 ザーメインはパンチョスを見て一言だけ言うと、再びベラマッチャたちを見て話を続けた。

「とにかく、どんなエージェントかも分からんのじゃ。街の道具屋で仮装行列用の、頭から被る面が売っておる。面を被り、その上からサンドガサ・ハットを被るのがよかろう」

「むぅ、そうしよう。被り物で防御し、いちかばちかエージェントへ先制攻撃をかけようではないか。それとスッペクタ君がカツラを被っていないのは不味い。カツラを着けて、股ドールの元へ案内して貰おう」

「貴公等、何かあったら、すぐにワシの元へ来るんじゃ。良いな?」

 ベラマッチャたちはザーメインと別れ、スッペクタと共に道具屋へ向かった。

 不敵な笑みを放つ不気味な男の面を五個買い求めると、今度はカツラ屋へ向かい、七・三分けのカツラを買ってスッペクタに被らせた。

 シャザーン卿がヘンタイロスの背に跨り鞭を打つ音が響くと、ベラマッチャたちはポロスの街を後にしてワグカッチへ向かった。


2017年11月8日カツラ大戦争