第三話 Substitute 其の3

2017年11月8日カツラ大戦争

 パンチョスはスッペクタを一瞥すると、部屋の隅から椅子を持って来てベラマッチャの横に座った。

「流石はベラマッチャさん。もう暴行族を始末したとは仕事が早えぜ。で、何で暴行族のリーダーが居るんだい?」

「むぅ、それが不思議な事件なのだ。暴行族は全員カツラを被っており、被っている間の記憶が無いらしい」

「カツラ? 禿が被るカツラかい?」

「そのカツラだよ、パンチョス君。そんな不思議なカツラの話を聞いた事があるかね?」

「被ると記憶が無くなる……。いや、聞いた事が無えな……」

 パンチョスが腕を組んで考え込んでいると、シャザーン卿が口を挟んできた。

「これからポロスに向かい、ザーメインに聞くのが良かろう。パンチョス、貴様も来い」

 ベラマッチャたちは旅の身支度を整えると、スッペクタを連れてポロスの街を目差した。ワグカッチからポロスまでは一日の距離である。

 急ぎ足で旅する一行は、夕暮れ時に草原で夕食を済ませ、その場で野宿となった。

 翌朝早く出発した一行は昼前にポロスの街に到着し、活気が戻ってきたポロスの街の人混みを縫うようにザーメインの家に向かった。

「ザーメイン、お邪魔するよ」

「おぉ、ベラマッチャたち」

 ベラマッチャが扉を開けると、ザーメインは読んでいた本を置いて笑顔で出迎え、ベラマッチャたちを椅子に座らせた。

 ザーメインは紅茶を淹れてベラマッチャたちに振舞うと椅子に座り、湯気の立つ紅茶を啜りながら話し出した。

「貴公等、世間話をしに来た訳ではなかろう?」

「むぅ、実はカツラについて尋ねたい事があるのだ」

 ベラマッチャの話を聞いたザーメインは、紅茶を噴出して笑い出した。

「ワッハッハ! 何の話かと思えば、カツラじゃと? 貴公、三十歳を過ぎたばかりで、もう心配か? どこじゃ? 前か? テッペンか? ヒーッヒッヒ!」

 笑いが止まらぬザーメインに、ベラマッチャは話し掛けるタイミングを掴めずにいたが、代わりにシャザーン卿が口を開いた。

「ザーメイン、禿の心配で来ている訳ではない。被ると記憶が無くなるカツラについて聞きたいのじゃ」

 ザーメインの笑いはピタリと止み、やがて小刻みに震えながら振り向いた。

「なっ、何ぃ! 記憶が無くなるカツラじゃと!?」


2017年11月8日カツラ大戦争