第三話 Substitute 其の2

2017年11月8日カツラ大戦争

「うぉッ!」

 ベラマッチャたちが驚き、椅子に座ったまま見ていると、鎧はギシギシと音を立てながら、ぎこちない動きでこちらに向かって歩いて来る。

 ヅラスカヤの魔術か!? ベラマッチャは咄嗟に身構えると、鎧は一番近くに居たポコリーノの前で立ち止まった。

 ポコリーノは用心深くゆっくり立ち上がり、鎧のあちこちを不思議そうに見回している。

 すると突然、ポコリーノに向かって鎧が両腕を伸ばした!

「キエェッ!」

 焦ったポコリーノの殺人パンチが鎧の顔面を直撃し、兜を吹っ飛ばしたが、そこにあるはずの頭が無い!

 立ち尽くすポコリーノと鎧を見ながら、「やはり魔術か?」と思ったベラマッチャの耳に、不敵な笑い声が聞こえて来た。

「フッフッフ……」

 声は明らかに鎧から出ている。身体を硬直させたまま見ていると鎧はガタガタ動き出し、兜が載っていた空洞部分から何かが飛び出した!

「ヒエェッ!」

 スッペクタは驚きのあまり悲鳴をあげて椅子から転げ落ち、ヘンタイロスも腰を抜かして尻餅をついた。シャザーン卿も目を丸くしている。

「グッドアフタヌ~ン、ベラマッチャさん」

 揺れる長大なリーゼントにペリカンの様に長い顎、姿を現したのは『カルロス・パンチョス』だった!

 パンチョスは手際よく鎧を脱ぎ捨てると、ポコリーノをジロリと見た。

「誰が精神も難聴だって?」

 パンチョスの喧嘩を売るような視線に、ポコリーノは跋が悪そうに作り笑いを浮かべた。

「よっ、よお~兄弟。今、お前の話をしてたんだ。退院した筈だってな」

 適当な答えでお茶を濁そうとするポコリーノに、パンチョスは冷たい視線を投げ付け、ベラマッチャへ顔を向けた。

「ここへ来る途中、渡世人から聞いたぜベラマッチャさん。暴行族とやらを退治するんだって?」

「その件なら先程カタがついたよパンチョス君。彼が暴行族のリーダー、スッペクタ君だ」

 ベラマッチャはパンチョスの怒りが自分に向かずホッとし、紅茶を一口啜るとスッペクタを指差した。

 スッペクタは立ち上がってぺこりと頭を下げると、訳が分からないといった顔で椅子に座り直した。


2017年11月8日カツラ大戦争